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第6話 細かすぎるから文字が小さくなるんだよ
「私、一度も焼きそばパンを食べたことが無いの」
次の日、敬子はいきなり焼きそばパンの話をしてきた。
「焼きそばパン！あれは美味しいよ！」
「食べたいな～、買ってきて！」
「え？俺は弁当だから学食には行かないよ」
「アンタまだ交際の心得を読んでないのね、その９３を読みなさい」
「交際の心得その９３ 女子が学食で騒乱に巻き込まれる可能性がある場合、男子はその身代わりとなるべし」
学食での騒乱て言うのは、焼きそばパン争奪戦のことなのか？なんなんだ？このピンポイントな心得は。そんな細かいことまで書いてあるからぎっしり詰まって文字が小さくなるんだよ。
敬子は小銭を渡してくれた、俺の財布から。
「確認なんだけど、これってパシリじゃなくて男女交際だよね？」
俺は敬子に聞いた。
「はあ？焼きそばパンと言えばパシリの定番でしょっ！じゃなかった、男女交際の一環でしょ！」
今はっきりパシリと言ったよね。
海翔は４時間目が終わると食堂に全力で猛ダッシュした。やきそばパンを求めて殺到する生徒たち。パン売場の前には人だかりが出来て怒号が飛び交う。確かにこれは騒乱だ。
でも敬子のために頑張って焼きそばパンを手に入れることが出来た。
「ありがとう！お釣りはお駄賃にしていいわ」
やった！20円のお釣りが貰えました！
あれ？もともとこれは俺のお小遣いだよね？あまりの理不尽さにポカンと口を開けて敬子を見た。
「何？口を開けて？あ、焼きそばパン欲しいの？ひと口あげようか？はい、あーん」
これは絶対に食べる直前に引っ込めるパターンのやつだ。引っかからなかったら機嫌を損ねるんだろうな。仕方がない、
「あーん」
俺は口を大きく開けた。もぐっ。
え？あれ？焼きそばパンをひと口齧れたよ。
「どう？美味しい？」
「うん、美味しいよ……」
「そう、お毒見ありがとう。じゃ、じゃあ私も食べてみよっと」
敬子さん、それって間接キス……
「う、うるさいわね！別にアンタに毒見させて、さり気なく間接キスしてやろうなんて思ってないっての、てか間接キスとか考えるな、バカっ。焼きそばパン全部あげるわよっ、ありがたく思いなさい！」
ありがとう……いや違う、俺のお小遣いで買ったんだぞ。
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