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第9話 許可を得て女子と喋るぞっ
「最近敬子さん以外の女子と喋ってないなー。喋ってもいいという許可をください」
イエローカードを提示されてから1週間、俺は女子と全く喋っていない。
「あら海翔、いきなり唐突に堂々と浮気宣言をするとは度胸が有るわね」
「これは浮気じゃないよ。男子とばかり喋ってたら人として偏ると思うんだー」
「な、なるほど、そうね、将来の旦那さんが偏った人になるのは困るわね」
「それに」
「それに?」
「敬子さん以外の女子と喋ったほうが、敬子さんの良さをさらに確認出来ると思うんだー」
「そ、その通りね、それは重要ね。なるほど、私の良さをもっと感じたいわけね。良いわよ、許可するわ。そのかわり私の良さを思い知りなさいよ!」
あっさり許可してくれた。さっそく女子と喋るぞ。俺は敬子を残して教室を出た。
「えと、海翔くん、女子と喋って大丈夫なの?交際届に署名捺印したんだよね?敬子の許可得てるの?」
廊下で最初に出くわした中学の同級生香奈子に声をかけると、やっぱり当たり前のように交際の心得を知っていた。
「許可は取ったよ。でもなんでそんなに詳しいの?」
「合格発表の後に貰った書類の中に交際届が入ってたでしょ?その裏に心得が書いてあったじゃない。女子と喋るなって項目が有ったよね?」
あの書類の中に交際届が入っていたのか。知らなかった。
「その項目は有ったけど署名捺印してから初めて知った」
「ええ!?交際届を知らなかったって……馬鹿じゃ……あ、いや、ごめん。そっかあ海翔くんって内容を読まずに署名捺印する系の人なんだ……将来結婚したくないタイプだわ」
内容を見ずに署名捺印するってそんなにダメなことなのか?
「ダメに決まってるじゃない。トラブルに巻き込まれるかも知れない男なんて。そもそもなんで交際届を提出したの?」
「え?付き合い始めたら提出しないといけないんじゃないの?」
「ええ?馬鹿……うーん……いや、やっぱり馬鹿ね。より強固な付き合いを望む人は出すかも知れないけど、あれだけ面倒な心得があるから普通は出さずに付き合うんじゃないかなあ、て言うか敬子と海翔くん以外はそんなの出さずに付き合ってるよ」
提出しなくても良かったの!?もしかして俺、うまいこと騙された?
「やっぱり内容も読まずに署名捺印する人って結婚したくないタイプだわ」
署名捺印をする前にもっとしっかり読めば良かった。ああ、もう……
「疲れた」
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