3日目*同じ部屋に帰りたい。

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みのりが、私の方に顔を近づけて、鼻をクンクンと動かす。 「えっ、なに、汗くさい?」 「ううん、琴香、なんかいいにおいするなって思って。甘い感じの」 「あ、それ、朝ごはんかも。パンケーキ焼いたんだよね」 制服に鼻を近づけるけど、自分ではよく分からない。 「朝からそんなことしてんの? すごいね。私なんか、トーストだけで力尽きるんだけど。バター塗るのも、めんどい」 「私だって、いつもはしないんだけど。眠いしね」 「ね。一分でも長く寝てたい」 「そうそう。でも、いつもおいしそうに食べてくれるから、頑張りたくなっちゃって」 「誰が? 親が?」 当然のように凌の顔を思い浮かべていたから、ギクリと心臓が(こわ)ばる。 そうだ、まだたった三日なのに、すっかり凌との生活に慣れてしまっていた。 みのりは、幼なじみ関係だってことも知らないのに。
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