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「えっと、あの、お、お兄ちゃん! 綾瀬くんは、朝に見たでしょ?」
「ああ、部屋にいた、背の大きいあの人? 呼び捨てなの?」
「う、うん、仲いいんだ、うちの兄妹」
青ざめた顔で、バレないようにと、必死に弁明を試みる。
「いいね、そういうの。俺、ひとりっこだから、兄弟がいる人って家の中楽しそう」
私もひとりっこですけども。
そんな言葉は飲み込んで、愛想笑いを貼り付ける。
「そういえば、君嶋の兄ちゃんって、なんか……誰かに似てるよな」
「え、ええ……? そうかな? そんなこと、イワレタコトナイナー……?」
冷や汗が止まらず、ついカタコトの日本語になる。
朝のあの数秒で、記憶に残るほど、顔を見られていたなんて。
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