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「ちちち、違うよ! 私、彼氏とかいないもん」
びっくりした。
動揺して落としたチョコを拾って、カゴに入れる。
「あ、そうなんだ? 君嶋って、モテそうじゃない?」
モテたことなど、人生で一回もない。
サラッとこんなことを言ってしまうあたり、言い慣れてそう。
こういうのを無意識に女の子に使って、知らないうちに気分を良くさせてるんだろうな、きっと。
「モテるわけないじゃん。綾瀬くんこそ、女子にめっちゃ人気あるの、知ってるんだからね」
「それこそ、まさか。俺だって、彼女とかいないし」
「告ってくる先から、次々とふってるだけじゃないの?」
「人聞き悪いな」
「ごめん、ごめん」
というか、聞くまでもなかった。
彼女がいるのなら、こんなふうに私とふたりきりになって、誤解されるようなこと、するはずないか。
「買い物は、これくらいでいいかな。レジに行ってくるね」
「そっか、彼氏いないんだ。よかった」
「?」
レジに向かう途中、背中に何か言われた気がして、振り返る。
だけど、ただ手を小さく挙げられただけで、それは気のせいだったらしい。
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