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私は、高校二年生になった。
マンション五階、505号室。
セーラー服のスカートをひるがえして、部屋を飛び出す。
「やば、遅刻しそう。いってきまーす!」
キッチンにいるであろうママに声をかけながら、ドアを開けると、「慌てて行っちゃダメよ!」と、背中から注意を呼びかけられた。
一度だけ隣の部屋を見て、すぐにまた前方に向き直る。
別に、何かを期待したわけじゃない。
中三から『リョウ』の名前でファッションモデルをやっている凌とは、高校も別になったし、行きも帰りも時間が違う。
今は接点がほとんどない。
だから、会える時は偶然部屋の前で鉢合わせになる時くらい。
一歩を踏み出そうとしたその時。
うちの隣の部屋、504号室が、ガチャッと開いた。
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