2日目*初めての恋は君のもの。

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「……あれって、琴香が好きでやってたんじゃないの?」 依然として目を見開いて、朝食を食べる手も止めて、凌が口を開く。 どうしたんだろう。 私は気にしないで、食事を続ける。 「好きと言えば好きだったんだけど、自分のためだけに作るほどではなかったかな。 焦げすぎたスポンジケーキとか、砂糖と塩を間違えたクッキーとか、それでも凌が嬉しそうに食べてくれるのが嬉しかったからだったんだよね」 笑うとふにゃっと目尻が下がる顔、可愛かったな。 昔のことを思い出すだけで、自然と笑顔になれる。 唇の端っこに、絶対に食べこぼし付けちゃってたりして。 「琴香、俺さ」 「ひとりっ子だけど、弟が出来たみたいで」 現在の凌の声と、私の思い出が重なった。 「え? 何か言った?」 「……別に」 聞き返した時には、凌はなぜかガックリと頭を落としていた。
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