3日目*同じ部屋に帰りたい。

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完全に部屋に入って、カーテンを開けると、凌は「うう……」と、苦しそうに(うな)った。 太陽が苦手な吸血鬼みたい。 この調子だと、布団を剥いだりなんかしたら、シュウっと蒸気みたいに消えそうだな。 「朝だよ。学校でしょ」 「いきたくない……。ねてる……」 「だめ。凌は、撮影とかで出席日数が普通よりも少ないんだから。行ける時は、行かないと」 「やだー……」 そのでかい図体を、一体どこまで縮められるんだか。 言葉を発するたびに丸まっていく体に、ため息をひとつ。 「朝ごはんも冷めるよ」 「!!」 そのひと言が効いたのか、凌は自ら布団から顔を出した。 「たべる。琴香のあさごはん……」 どうでもいいけど、朝は特に全部ひらがなに聞こえるな。
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