第2章

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  あれ以来、死んだように眠る日々が続いた。求められれば体を重ねるが、以前のように進んでベッドに潜り込まなくなった。電話で呼び出され夕飯を作り、情事の後はひっそりと自宅に戻る。   それでも良いと思ったのは惚れた弱みだろうか。あんなにひどいことをされても水城は彼を嫌いになれなかった。ただ悲しく、泥水に沈んでいくようだった。   「今日も泊らないの?」   シャワーを浴びて戻ってきた水城を見止めると、荒木は重そうな口を開いた。最近の荒木は水城の様子を窺うようなしぐさをする。申し訳ないと思っているから? そうじゃない。後腐れないセフレの機嫌を窺っているのだ。   「泊ってもいいの?」   「もちろん」   「じゃあ、そうしようかな」   乾いた髪を手櫛で整えると、荒木の腕の中におさまった。ほっと息をついた荒木の胸に頬をすり寄せて、水城は冷めきった瞳をそっと閉じた。   ***   水城は1人で街を歩いていた。涼に連絡を取って髪を整えてもらう約束をしていた。長い時は考えていなかったが、短くした分定期的に整えなくてはならないことを学んだ。店を訪れるのは三回目だ。1人で行くのは初めて。   荒木とは予定が合わなかった。いや、荒木は避けたのだ。水城は瞬時にそれを理解して「そっか。また今度」と笑った。もう「また」はないのだ。これで最後にするのだから。   水城の中の死までのカウントダウンは終わりに近づいていた。
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