37人が本棚に入れています
本棚に追加
水城は嫉妬するのだろうか。どんな顔をするのだろうか。嫉妬とは恐らく涼と水城が一緒にいた時に抱いた胸のざわつきのことを指すのだろう。興味を持ったのは久しぶりで、荒木はすぐに行動に移した。
浮気という最低最悪なやり方で。
水城に夕飯を作りに来てほしいと頼めば必ず夕方には買い物袋をぶら下げてやってくる。その時間を見計らって女を連れ込んだ。
端的に言えば作戦は成功だった。女の靴を見て青ざめて水城が、リビングで抱き合う荒木たちを目撃する。今にも倒れてしまいそうな顔色の悪さ。けれどそれは一瞬だった。すぐにいつもの無表情に戻ると頼んでいた献立通りに料理を作り始めた。
――つまらない。
そう思った。せっかくかわいい顔を見られたのに、すぐに戻ってしまうなんて。だから繰り返した。その顔を見るために何度も。数か月が経ったころ、何度目かの女が情事の後にこう言った。
「あの子もセフレなんでしょ? 男同士の見てみたいかも」
――水城をセフレなんて言うな。お前とは違う。
ふと荒木は水城と最後にセックスした日を思い出した。何週間も前の話だ。久しぶりにあの細い体を抱き締めたくなった。
キッチンで料理をする水城を見つけ、寝室へと引っ張る。水城は嫌がっていたけれど、だんだん甘い声を出すようになり荒木は理性を手放した。
それ以降、水城は明るくなった。最近笑わなくなり心配していたが、やはりたまには抱き締めてやらなくてはと荒木も笑った。
最初のコメントを投稿しよう!