第3章

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  その場で開けてやろうと思ったが、水城の意思を尊重してやりたいという思いからそれは憚れた。   真っすぐ涼が営む美容室に向かい、その扉を開けた。丁度客が誰もおらず、涼は暇そうにスタッフルームで座っていた。   「よお、予約もしないで珍しいな」   涼の呑気な声も届いていない様子で、荒木は手紙を突き付けた。   「今すぐこれを開けろ。早く!」   「お、おう」   あまりの剣幕に驚きながらも、ただならぬ雰囲気を察して涼は封を切り、弱弱しい文字を目で辿った。   『涼さんへ   突然の手紙に驚いたと思います。手紙の正しい書式も良く分からないので省略します。ごめんなさい。   さっそくですが、僕は死ぬことにしました。実はずっと前から決めていたので思っていたよりも怖くありません。   死ぬ理由は特にありません。楽になりたいのかもしれませんし、絶望したのかもしれません。正直、今の自分の感情は良く分からないんです。   この前、荒木について話したと思います。間違ってほしくないのは彼が原因で死のうとしているわけではないということです。僕の計画は荒木と出会う前から立てていました。そこに偶然、彼という好きな人が現れただけです。   でも、それならどうして涼さんにこの手紙を宛てているのかと思うでしょう。理由は簡単です。荒木に宛てたら僕は余計なことを書いてしまいそうなので、迷惑を承知で涼さんに渡すことにしました。こんな時ですら僕が頼れるのは貴方しかいませんでした。   もし僕が愛する人を見掛けたら言っておこうと思っていたことがあるんです。死んでくれって。   こんな手紙を渡されても困りますね。目を通したら捨てちゃってください。   さようなら、涼さん。お世話になりました。   水城安芸より』
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