その④ (本当の最終話)

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その④ (本当の最終話)

「あんっ、やっ……!」 「一緒にイこう、あ、でも、……ココ、締めるのは、  手加減な」  無茶なことを言って、柊二がまた激しく動き始めた。  もう、柊二の意のままにしか極められなくなっている  自分の体が恨めしく ── でも、愛おしい。 「あっ、あ……んん、あっ!」     (多分、明日は、    出発準備どころではないだろうなぁ)    がくがくと両脚が震え、穿たれる衝撃に、  体がずり上がる。 「ほら、駄目だよ、逃げちゃ……」 「ごめ、んっ……あ、やだ、ねえ、……あぁ、もっと、  突い ── っ!」    柊二の腕に痛いほど腰を捕まれ、  前後に揺すられる。 「い、いやぁぁぁぁぁ! ん、んア、アァァ!」    (ちょっ ―― はげし、すぎ……)    濡れた肉のぶつかる音が激しくなり、  柊二のそれがぐんと体の中で大きさを増す。 「りんたろ、おれの……りん……愛してるよ、……  愛してる、愛してるからっ」 「ん、あっ ―― も、……バカ……ぁ……」  ハードなセッ*スの言い訳じみていて、  倫太朗は朦朧とする意識でそれを揶揄したけれど。  でもそれが恋人の本音だとちゃんと知っている。     (あぁ、もう絶対、明日は……動けないよ……)    各務柊二の専用のおもちゃのように  翻弄されている下半身を、  どこか他人事のように思いやり。  この男だけが自分に与えることのできる、  めくるめく快感に、  倫太朗は歓喜の嬌声を喉の奥から搾り出して果てた。      それから倫太朗と柊二は夜が開けるギリギリまで  お互いの体を貪り合った。  逆立ちしたって一滴も絞り出せないってくらい、  思う存分欲情の証を放出して、別れの朝を迎えた。  室に備え付けのユニットバスで ――   柊二の病室は特別室! ――   身支度を整え出てきた倫太朗をベッド脇へ呼ぶ。 「なに?」  と、身を屈めてきた倫太朗の首へチェーンを通した  あのプラチナリングをかけてやる。 「! 柊二、これは ――」 「虫よけ」 「え?」 「お前、八方美人なとこはまだ治ってねぇからな、  アメリカじゃ狼が無限に寄ってきそうで、  俺は気が気じゃない」 「って、知ってたの? 派遣の事」 「大吾に言われた……お前の成長を邪魔すんなって。  それに、自分の立場をもう1度良く考えろとも」 「そう……」 「俺、神宮寺の娘と結婚する。でも、何年か経って、  まだ今の気持ちのままでいられたら、妻との関係は  清算して、もう1回、お前にプロポーズするよ」  倫太朗の目尻に涙が滲む。 「泣くなって」 「ありがと、柊二……ボクね、昨夜は凄く迷ってた。  けど、来て良かった。あつしに言われたんだ。  何も言わずに旅立つのは逃げるのと同じだって  ……本当に、来て、良かった……」 「愛してる、りんたろ」  今回のひと騒動で会えなかった数ヶ月でさえ、  こんなにも大きく変わった倫太朗。  あと2年も会わないでいたら、どんな変貌を遂げるか?  本当に今から2年後が物凄く楽しみで待ち遠しい。   『パートナー』完
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