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―― 6年前
2003(H15)年、3月下旬。
倫太朗は星蘭大医学部に入学したばかりの18才。
奇しくも、倫太朗が医学生として初めて受けた初実習の日が。
厚生労働省へ専門技官として出向する俺の大学病院勤務最後の日だった。
定時終業後、顔見知りのスタッフ総出で俺の送別会を開いてくれる事になり。
総勢・30名で夜の繁華街へと繰り出した。
ほとんど同じメンバーで2次会から3次会と流れ、所帯持ちと実家暮らしのメンバーが帰った後、4次会のショットバーへ行った辺りから俺の記憶はフィルターがかかったみたいに曖昧になっていた。
盛り上がり過ぎ ――
(恐らく、翌日から連休だという事で皆かなり
ハメを外していた)
電車もバスも、とうに最終が出てしまった後で。
頼りのタクシーでさえ、今は季節柄、送別会&新歓シーズン真っ只中で、空車は1台も捕まらなかった。
結局、俺と幹事役の部下、それに、倫太朗を含む帰りそびれ組6~7人は
ビジネスホテルへ泊まる事になった。
しかーし、ホテルへチェックインする段になっても、したたかに酔った倫太朗は俺に縋り付いて梃子でも離れようとしなかった。
で、仕方なくこいつは俺が引き受ける事に。
それにしても、酒の勢いというのは恐ろしい……。
同僚達に悪ふざけで飲まされ、いつもの倫太朗からは想像も出来ない位、
なんっつーか、その……あけっぴろげになっていて、ツインの客室へ入るなり、あいつは、俺をベッドへ押し倒した。
「ぎゃっ! てめっ、何すんだよ?!」
「センセ、ホントにあさって、アメリカに行っちゃうんですか??」
酔って潤んだ倫太朗の瞳は、18才男子のものとは思えない位、めっちゃ色っぽい。
「アメリカではなく、霞が関だが ――」
怯むなっ! 柊二、男だろ?!
自分自身を叱咤しながら、倫太朗へ優しく話しかける。
「なぁ、桐沢 --」
「そんなよそよそしい、他人行儀な呼び方は止めて下さいっ!」
「あぁっ??」
他人行儀な、って、俺ら他人だし……。
「なぁ、とりあえず、俺の上からどけ」
「嫌です」
即答かよ。
「嫌って、お前 --」
俺の言葉を遮るよう、ぶっちゅーうって、擬音まで聞こえてきそうな、倫太朗からの情熱的口付け。
俺は慌ててこいつを押し返した。
「なんでダメなんっ?? 男だからですか?」
そう、真剣な眼差しで訴える倫太朗。
「なんでって……」
一瞬、頭へ過ぎる、新聞の大見出し記事。
”厚生労働省職員、星蘭大医学部の1年生男子をホテルへ連れ込みワイセツ行為”
「お前だって分かるだろ? 俺の立場じゃこんな事したら ――」
「バレなきゃ、大丈夫です」
「はいぃぃっ??」
「それに合意の上なら淫行にはなりません」
そう行って、倫太朗は再び唇を重ねてきた。
今度は生意気にも、俺が容易く抵抗出来ないように、前もって俺の腕を押さえ込みやがった。
その上、うっかり開けちまった唇の隙間から自分の舌を……。
「んっ ――――!!」
こ、こいつ……めっちゃ、上手い。
ねっとり絡みついてくる舌の感触が、何とも心地よい。
気が付けば俺は、倫太朗の後頭部に手をあてがってその口付けを
より深いものにしていた。
そうしてると哀しいかな……男の条件反射ってやつで。
俺のムスコがムクムクとその本性を現し、早くこの窮屈な所から出せ!と自己主張をし始める。
「マジ、や、べぇ……倫? これ以上は、も、勘弁―― っっ、アホっ! 何処触っとんのや?!」
「凄……ね、もう、こんなになってるのに、我慢なんか出来るの?」
そう、面と向かって言われると何とも言えない……。
でも、俺は卑怯だ。
僅かに残った理性で抵抗を試みながらも、依然俺の上に跨ったままの倫太朗が自ら上半身の着衣を脱いで裸になるのを止められなかった。
その、滑らかな若々しい艶肌にグッと目が惹きつけられた。
「もし、この期に及んでセンセが尻ごみするなら、あなたから無理矢理犯されそうになったって、廊下へ出て大騒ぎします」
これが、決定打となった。
「やれやれ……俺も、えらいじゃじゃ馬に捕まっちまったもんだな」
倫太朗の体を抱き締めるようにして互いの体位をクルっと反転させた。
「おっぱじめたら、ただの触りっこじゃ終わらせねぇぞ止めとくなら今のうちだ」
倫太朗は返事の代わりか?
俺の肩口へスッと腕を回してきた。
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