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夜中に舐める切手は8カロリー。
きらめくネオンのなかにいる女性たちは輝いて見えます。
活気があり、忙しそうで、美しいです。
ですが、夜のお仕事に就いている方の自殺率は高いようなのです。
賑やかな喧噪から急に一人になり、猛烈な淋しさに襲われると話してくれたのはEさんでした。
「たぶん、そばにすぐ死ねる毒があったら飲んじゃうと思う」
というほど、しんどいそうです。
毒は手に入らないから、処方薬を飲む。
「そうすると、本当はすぐに寝なきゃいけないんだけど、多幸感(たこうかん)で変なことがしたくなるの。ものすごい数、手紙を書いたり」
Eさんは言います。
「たくさん、何十枚もの長文を書いてしまうんですか?」
私は訊きました。
私は知人・友人から、ものすごく長い手紙をもらうことが多いので、Eさんにもそう訊いてきました。
「違うの。短い手紙なの。元気? ひさしぶり。 さいきんはなにしてるの? 会いたいね。そういう感じで一言だけ書いて、何人もに送るの」
Eさんは言いました。
「じゃあ、何人もにメッセージを送りたいのですね」
私は訊きました。
「そうみたい。正気じゃないから、へらへらしながら書いてる。それを、家のそばのポストに入れに行くの。切手はストックしてる。直接舐めると8カロリーになっちゃうの、知らないで舐めてたから、即やめた。今は水で濡らすか、ノリで貼るかしてる」
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