夜中に舐める切手は8カロリー。

3/4

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
私はEさんと会ったあと、ネットカフェに戻りました。 そして、持参していたバッグのなかを覗くと、何かが入っています。 3ccae9e5-e859-4fdc-a90b-0221e778d50dEさんが深夜に書くと言っていた手紙のうちの一通のようです。 Eさんが、いつの間にか私のバッグのなかに入れたのです。 律儀にも、私の名前の横に、舐めれば8キロカロリーの84円切手が貼られています。 住所の記載はないのに、です。 裏を返すとEさんの部屋の住所が書かれていました。 「この手紙は天国に行けるか地獄に行けるかの途中で書いています」 などという書き出しでした。 私は心臓がどきっと脈打ち、その先を読む前にEさんの家に向かっていました。 手紙を持ったつもりが、置き去りにしてしまいました。 私はそのころ、お金を持っていたので、タクシーを使います。 正直、私は動揺していました。 さらに白状すれば、「どうしてこんな面倒なことをするのだろう」と思いました。 私にどうしてほしいのだろう。 私とEさんのあいだに何があるのだろう。 Eさんのことはそんなに重要ではない。 タクシーのなかで、私はそのように感じていました。 この感情は、Eさんが亡くなっていたら悲しみすぎないで済むように、の予防線だったのだと思います。 7566f9f6-21e9-4e63-8d7b-dcdeda53eb70 彼氏と天国へ行きたい。 そこで暮らす。 だれにも邪魔されずに二人で暮らすよ。 Eさんはそう語っていました。 ということは彼氏も連れていくのか。 彼氏から持ち掛けられた心中なのか。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加