人たらしにもうんざり

2/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 その人は私が二度付き合って、二度振られた男の子だった。一度目は高校時代、二度目は私が社会人一年目で彼は遠方に通う大学生。遠距離恋愛だった。別れてから四年の月日が経っていたことをいまさら思いだした。  白Tシャツの上にジャケット、程よいオフィシャルで程よくカジュアル、高校の時から大人っぽい服を好んで着ていた彼はそれ相応の大人になっていた。 「どうして……、こっちに帰ってきたの?」 「いや、たまたま仕事で来ていて」と鼻を人差し指で掻くしぐさは昔と変わらない。私は眼を細くして彼を見た。こんな偶然あるのか?   彼は私の瞳の真意に気づいて慌てて両手を振る。 「あかりが駅前で働いていた時は知っていたけど、まさか移っていたとか、この店にいるとか全然知らなかったし」  彼の慌て様がおかしくてしばし見つめていた。そしたら「困ったな」と首の後ろを擦りだす。これも昔と同じ。  でも、よく考えたらわかる話。私たちが付き合っていたのは四年前。彼とはそれから連絡を一切取っていない。分かるはずもない。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!