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ようやく疑いの解けた彼とは同級生だった。私の通っていた高校の同期はほとんど同県に残っていて、彼だけ大学進学を理由にこの土地を離れて新しい場所に行ってしまった。
あの、と申し訳なさそうに箱に入っているチョコレートケーキを指さす。
「あれにメッセージ入れることってできる?」
少しだけ上がった脈が急に落ち着いた。そりゃそうだ、彼も二十六、彼女くらいいるだろう。私はケーキ屋さんとして接客に徹する。
「あれの上に置くことはできないですが、添えることはできますよ」
よかった、と言わんばかりに胸をなでおろす彼を見て腹が立つ。どうして私が元カレの彼女にメッセージ書かなくちゃいけないのよ。
「それじゃあ、『吉野さん、誕生日おめでとうございます』でもいい?」
「はい、かしこまりました。少々お待ちください」
そう言って私は調理場にいるスタッフにそのことを伝える。私はその間ももやもやとしていた。さん付けということは年上か? そうかそうか、君は昔から好きな女優も年上だったよね。よかったね夢がかなって。
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