4. どれ

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 太腿に、私から湧き出る蜜と彼の精が混ざり合ったものが、伝い落ちる。慶一さんはそんな私の背面を十分に堪能すると、ゆっくりと後ろから入って来た。同時に胸を揉まれ、油断していた刺激によってさらに快楽に没頭する。  こうして前からと後ろから、それぞれ最後まで登り詰めた後、一緒にお風呂に入り直し、そこでもまたイカされた。パジャマを着させてもらい、ベッドに入る頃には、私の意識の半分はもう無かった。 「お休み、紗江」  ちゅって、こめかみに慶一さんの唇の感触。抱きしめられたから、おでこをぐりぐりと彼の胸に押し付けて、ついでに匂いを嗅ぐ。慶一さんの匂い。いい匂い。 「お休み、なさい……」  夫の匂いに安心して、私はそのまま眠りの世界へ落ちていった──  ◇◇◇◇  寝室の中、ベッドに横たわる夫婦がいる。黒い犬はその二人を部屋の隅からじっと見つめていた。  寝具に包まれているが、夫が妻を抱きしめて、彼女の呼吸音を聞いているのが分かる。彼女の寝息はゆったりと規則正しく、深い眠りについたことがうかがえた。
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