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見慣れない眼鏡姿の天王寺から見つめられたら、なんか妙にドキドキが止まらない。眼鏡をかけているだけなのに、すごく知的でクールで、魅力的に映ってしまう。
なんでこんなにカッコイイんだろう、なんて見惚れてしまうほどだ。
「……眼鏡、かけるんだな」
「似合っておらぬか?」
「いや、なんていうか、……似合いすぎてて、ちょっとドキドキする」
妙に高鳴る鼓動に、俺はつい本音を口にしてしまった。
それを聞いた天王寺は、柔らかく微笑むと眼鏡を少しだけずらし、上目遣いで俺を見つめてくる。
「姫の心を奪えるのならば、普段より眼鏡をかけるとしよう」
俺がドキドキすると言ったことで、天王寺はこれから眼鏡をかけると言ったが、こういうのは時々するからドキドキするのであって、俺はそれを天王寺に言う。
「普段しないから、ドキドキするんだよ」
「さすれば、時々かけるとしよう」
天王寺は今後、時々眼鏡をかけると言ったが、眼鏡は反則だと思った。
だって、めちゃめちゃドキドキするんだ。なんか天王寺じゃないみたいで、すごく大人な感じが出て、色気がすごい。
本当にモデルみたいなんだって、女の子じゃないけど、男だってドキドキする色気。
そんな大人の雰囲気漂う天王寺に、うっかり見惚れていたら、掴んだ手をわずかに引き寄せられ、声を潜めてとんでもない台詞を吐かれた。
「その姿、まるで新妻のようであるな」
エプロンをしている姿が、そう映ると囁いた。
ブワッと顔から火が出そうになった。公共の場で恥ずかしい事いうなぁぁ! と、叫びそうになった俺は、なんとかそれを抑えることに成功し、掴まれた手を取り戻す。
「ご注文ですか?」
冷静さを保ってそう尋ねれば、天王寺は真っ赤になった俺の顔を楽しそうに眺めながら、ブラウニーの追加注文をした。
それと同時だった。
「こっちもお願いしまぁ~す」
大きな声で俺を呼ぶ声がしたのは。もちろん呼んだのは、高城だ。
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