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これ以上カナちゃんに捕まらないよう、早々に職場を後にした。
外に出たところでメールの着信が鳴る。
【ごめん。ちょっと遅れる。連絡するから何処かで時間潰してくれる?】
【うん。分かった。じゃ、待ってるわ】
【あのこと、もう一度よく考えて】
【うん。分かった。】
無意識に小さな溜息を洩らしてスマホをしまうと、待ち合わせ場所に近いカフェに飛び込んだ。
注文したホットカフェラテを手に、空いてる席を見つけ腰を降ろして、先刻のメールをもう一度開く。
『もう一度考えて、か』
彼の送ってきた文字を見返す。
彼――、柏木義人と初めて会ったのは一年前だった。
その彼と知り合ったタイミングと言ったらそれはもう最悪。
それまで二年半余り付き合っていた、当時の彼とこれ以上はないくらいの最低の別れ方をした直後のことで――、本当は思い出したくない。
でも、柏木君が「もう一度考えて」何て言うから、思い出さない訳にはいかない。
二人の原点はそこなんだから。
最悪の別れ方というのは、まあ簡潔に言うと、私は当時の彼を友人に寝取られたのだ。
彼が浮気しない保証何てない――、男なんだからそういう気を起こしても不思議ではないと思っていた。
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