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次に記憶を取り戻した時は、見たことのない部屋で横に見たことのない男がいた。
それが柏木君だった。
彼が言うには、私達は繁華街の外れのバーで知り合ったらしい。
柏木君が店に来た時、既に私は酩酊してて彼に絡んだそうだ。
もう立派な質の悪い酔っ払いだ。
酩酊した私は自力で動けず、柏木君に担がれるように店を後にして、彼に保護された。
人生で初めて、知り合ったその日に相手と夜を共にした。
次の朝、目を覚ますと私は下着姿だったのだけど、彼と寝たのかというと、そこははっきりとした記憶がない。
その日から彼との付き合いが始まった。
ただ、その交際というのが……ちょっと……変わっていた。
一緒に食事に行った。
お酒も飲みに行った。
酔い潰れないよう気を付けて。
遊園地に行った。
水族館にも行った。
海にも、お祭りにも行った。
でも、体の関係には一度もならなかった。
まるで健全な中学生みたいに。
いや、今時健全な中学生ならもう少し恋人らしいことの一つもするんじゃないかな。
そう思うくらい、私達の距離感は微妙だった。
曖昧な関係は一年続いた。
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