3/6

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
『何で?どうしたの?』ちょっと怖くなった所為か声は少し震えていたかもしれない。 『……変かもしれないけど、怖いからさ』 『怖い?どうして?』柏木君も、怖いんだ……同じなんだ、同じ感情を抱いていることに不思議と安心した。 『人の本心を確かめるのって怖いよな。でも訊かないといけないから。ミツホの出した答えを』 『待って。その前に私が訊きたいことがあるの。どうして今なの?今まで過ごしてきた時間って何だったの?』 そう――私はそれを確かめたかった。 それを訊かないと、答え何て出せない。 私は耳を澄まして柏木君の答えを静かに待った。 ただ、胸の鼓動だけは内に響いている。 『二人が初めて出会った日――六月十五日を最高の日に、一番の思い出の日にしたかった。二人の出発の日なんだから。ミツホ、あの日ミツホは何て言ったか覚えてる?』 私は胸の内が、ぽかぽか温かくなってくるのを感じながら首を横に振った。 『覚えてる訳……ないでしょ?だってあの時、酔っ払って柏木君に助けて貰ったんだから。私、何て言ったの?』 『今日は人生、最悪の日だぁ!って駅前のデッキで月に吠えてたよ』 最悪だとは思ってたけど、そんな酔っ払い丸出しの行動してたなんて、胸の内だけでなく顔まで熱くなってくる。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加