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『何で?どうしたの?』ちょっと怖くなった所為か声は少し震えていたかもしれない。
『……変かもしれないけど、怖いからさ』
『怖い?どうして?』柏木君も、怖いんだ……同じなんだ、同じ感情を抱いていることに不思議と安心した。
『人の本心を確かめるのって怖いよな。でも訊かないといけないから。ミツホの出した答えを』
『待って。その前に私が訊きたいことがあるの。どうして今なの?今まで過ごしてきた時間って何だったの?』
そう――私はそれを確かめたかった。
それを訊かないと、答え何て出せない。
私は耳を澄まして柏木君の答えを静かに待った。
ただ、胸の鼓動だけは内に響いている。
『二人が初めて出会った日――六月十五日を最高の日に、一番の思い出の日にしたかった。二人の出発の日なんだから。ミツホ、あの日ミツホは何て言ったか覚えてる?』
私は胸の内が、ぽかぽか温かくなってくるのを感じながら首を横に振った。
『覚えてる訳……ないでしょ?だってあの時、酔っ払って柏木君に助けて貰ったんだから。私、何て言ったの?』
『今日は人生、最悪の日だぁ!って駅前のデッキで月に吠えてたよ』
最悪だとは思ってたけど、そんな酔っ払い丸出しの行動してたなんて、胸の内だけでなく顔まで熱くなってくる。
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