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吐き出された私の落ち着き先は、入社してもうすぐ十年になる出版社。 『もう一年経つのか、長いよなぁ。それが続くか、終止符(ピリオド)が打たれるか』それが今日決まる、かもしれない。 いやいや、占いのようにこの晴天下に傘を持った運命の人が現れないとは言い切れない。 曇天の現実と輝ける逃避の間を、私の思考が振り子みたいに往き来し始めた時、それを止めるようにメールが着信した。 【今日の約束大丈夫?六時に駅のステンドグラス前で待ってるから】 LINEの方が手軽にやり取り出来るのに、あいつは「二人だけでのやり取りならメールでいいよ」そう言って聞かないので、ずっと私達の連絡はこれだ。 若干イラッとしたので、簡潔に答えてやった。 【了解!】 【大丈夫?調子悪いの?】 【ごめん。今、あまり時間ないんだ】 送信を押す指先に思わず力が入る。 【分かった。じゃ、また後で】 何の実りもないメールのやり取りを終えて、溜息を一つ吐く。 自分のデスクに腰を降ろすと、一日はこれからだというのに体も心も倦怠感に包まれた。
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