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気分を入れ換えて仕事に集中し始めたら、その後は今朝からの出来事も吹っ切れたように忘れた。 退社時刻が近づいて、この後のことが頭を過るまでは……。 そうして帰り支度をしていたら、背後に気配を感じて振り返った。 そこには今にも頭ポンポンしようとして、手を上げている野原香菜がいた。 『また性懲りもなく……』ちょっと呆れ顔になる。 「カナちゃん、何?」私は退社時刻後は呼び方を変えることにしている。 満点女子は悪戯を見つかった子供よろしく、ばつの悪るそうな笑みを浮かべて辿々しく口を開く。 「あ、あの、すみません。仕事終わったから…いいかな~って思って」 『彼女なりの配慮はしてたのか』そう思って、ちょっとだけ彼女への評価に加点してあげた。 「で、どうしたの?何か用事あったの?」 「えと、先輩ここ一週間元気無いなって気になってたんで…良かったらご飯一緒に行きません?」 『どした?どした?何が起きた?』 お馬鹿で礼儀知らずではあれ、まあそんなに悪い子ではないと思ってはいたけど、意外なお誘いに驚いた。 同時に、そんなに落ち込んだり、元気無さ気だったかな……と朝からの一日を振り返ってみた。
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