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ばら色の香りは胸の内に
――あの美しい人は、今どこで、何をしているのだろう。
星の綺麗な夜空を見上げると、どうしても。
ばらの名を持つ少女は、菫青石に似る、宝石の瞳を思い出す。
人、と括ることが正しい表現かも怪しい、遠い存在。
閲された歳月、夜の帳で、包み包まれ生きるもの。
居所も知れず、名前も知らず、出会ったのもたった一度きり。
けれど、甘やかな残り香は、今も胸に燻ぶり、燃え落ちずにここにある。
あの魔女は、今もどこかの夜空の下を、ゆらゆら泳いでいるだろうか。
余人には決して見えない流星、鮮烈な輝きをひた隠したまま。
――いつまでも、どこまでも優雅に、永遠に朽ちない宝石のように。
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