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香水瓶の残り香を
一等星が、ちらちらと顔を覗かせる宵の口。
沈みかけの夕日の背面の空に、星より精彩な明りが灯る。
その、光彩離陸の異観。
「お星様……じゃない。――魔女?」
お山の天辺に突如現れ出でた、薄紫の光芒。耿耿と帯を引く人型の燐火。
煙のように尾灯をくゆらす、その棒切れの穂先は、よく連想される、魔女の道具とは一致しない。
持ち手の長さこそ、元以上に備えて見えるが、庭などを掃くために誂えた、枝葉を束ねた仕様ではなく。
塵叩きか柄付雑巾よろしく帆がかけられ、海の生き物擬きに空気を吸引、噴出して、推進している。
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