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長柄の中央、横向きに腰掛ける魔女――竹箒の代替品――らしきものの騎手は、およそ世を憚るとは言いがたい。
全く煌びやかな装いで、悠悠と月の白い明るいを夕闇を泳いでいる。時折ちかちか反射しているのは、彼女の身に着けた宝石類か。
もしくは、髪や豪奢な衣服、帽子の下の薄衣も、更に下に隠れた顔すらも、ぼんやりと明るく――目を引いて見えるのは、錯覚だろうか。
昨今、魔女の数は減少の一途だ。もともと珍しい上、殊更に派手ななりであるので、空にくっきりと色濃く、余計に浮いて見えるのだろう。 傍観者たる少女は、非日常の光景に魅入られ、歩みを止める。
(いけない。帰らなくっちゃ)
年の頃は十と、もう一つか二つほどの幼い娘。帰路の途中、日用品のたっぷり入った紙袋を前に抱え、少女は小路を駆ける。
光は間もなく、音もなく。少女の行く先と同じ方へ途切れたが、既に、背を向けた後のこと――。
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