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宵は刻限となり、夜がそぞろにやって来る。
二番手三番手と、次次に現れる星星で、中天が賑やかになるにつれ、相対する地上はしん、と静まり返る。
薄闇の道道、歩き慣れた復路であっても、手燭もなければ心許ない。
思った以上に遅くなってしまった――と、逸る気持ちが前に出たために、少女は少少の横着を決意する。正しく裏に回って入るべきところを、表から入ろう、という。
自宅と店舗を兼ねる家屋の、店側に設えられた、お客様用の出入り口。
居住側に直接通じる裏口よりも、表口のほうが手近だ。
辺りも暗く、閉店の頃合い。いつも通りなら、とっくにお客もいないだろう――などと。
常ならば罷り通るが、今回ばかりは認識の誤りと、時置かず知るとも知らず。
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