雨のロマンス

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雨のロマンス

「はあ…っ…」 窓についた水滴越しに見る赤や青のLED照明が美しくて…なんてそんなロマンティックなため息では無い… 誰も知らないけれど、僕は恋をしている… 決して実ることの無い恋… こんな冴えない大学生に不釣り合いな女性を好きになってしまった… —— ある雨の朝、僕は一本早いバスに乗ろうとスマホ片手に傘の列に並んでいた。 バスが到着して傘を畳んだその時、バスの階段(ステップ)を上がる黒いヒールの靴が目に入る… 雨とバス特有のなんとも言えない臭いの中…花柄の傘を持ったその女性はバスの中程の席に座った… 僕もその時は特に意識はせずに…なんとなくその すらっとしたスーツを着た女性の側に立った。 女性は曇りガラス越しに外の景色を見ている。 綺麗な女性(ひと)だな…ではなく、可愛い女性(ひと)だな…という第一印象だった。 …勿論、表情の印象だけではなくて、可愛い感じのバッグとその持ち手に付けられた『ニヤン』のキーホルダー… ニヤンはネコのキャラクターの名前でこう見えても可愛いモノ好きの僕にとっては… 「へえ…分かってるじゃん!!」 っていう…何処からやってくるのか自分でも解らないような上からの感想が頭に浮かんできた。 やがて…バスは駅に到着し…彼女は花柄の傘と一緒に地下鉄の階段を降りて行った…
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