recipe4

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「これこれ!こういうのが食べたかったんだよー。」 その日、浮き立つような気持ちを感じながら夕ご飯の仕度をした。豚カツと唐揚げなんて偏ったメニューでも気にならない。 夫はご馳走を目の前にした子どものようにテンションを上げて、“いただきます”も言わず、いきなり食べ始めた。 「やっぱり好きな物が一番ね。」 夫に対する気持ちとは裏腹に、にっこり笑ってそう言った。私の中の雨は少しの間は止んでいる。彼の笑顔のおかげで……。 健康管理なんてどこ吹く風の夫。いくら私が健康を気遣った料理を作っても、食べてくれないのだから全く意味がない。 そんなに病気になりたいのなら、勝手にすればいい。 美味しい料理の秘訣は愛情だなんて言うけれど、それが本当に味に出るのなら、豚カツと唐揚げはとんでなく不味いものに仕上がっているはずなのに。夫の箸は止まることがなく、お皿の中はドンドン減っていく。 熱々の唐揚げとトンカツには冷たい心を隠し、あの冷たいスープの中にはちょっとした熱を隠した。 隠れているから隠し味。それで良い。 ―――どうぞ召し上がれ。 〈end〉
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