recipe1

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何を作れば良いだろう? 食べてくれる人の顔を思い浮かべ、冷蔵庫の中身と相談しながら思案する。このところの暑さで夏バテ気味かもしれない。心にも身体にも染み渡るようなもの――そうだ、冷製スープにしよう。 茹でた枝豆の鞘を押して、プチプチと豆を取り出す。ガラスボウルの中は黄緑色の豆、左側に空の鞘が山となる。こういう単純作業は無心になれるから良い。ううん、完全に無心じゃない。空っぽになった頭には色々な事が次々とよぎって行く。 彼は喜んでくれるだろうか。暑い日が続いていて、疲労も溜まっていることだろう。夏らしく、枝豆で作った冷製スープが彼の癒しとなることを願いつつ、プチプチと豆を取り出す。 食べる時には凛々しい眉を下げて満開の笑顔を見せてくれるかもしれない。普段は少し三白眼気味の鋭い目をしているのに、笑うと急に可愛く見える彼の姿を思い出して、自然と自分自身も薄らと微笑んでしまう。端から見たら気味が悪いかもしれないけれど、そんなことは構わない。今は一人だから……。 微塵切りにした玉葱、サイコロ状にカットしたジャガイモ、枝豆、あとは水とコンソメ。スープメーカーに材料を全て投入してスタートボタンを押す。後は仕上げに牛乳と塩コショウで味を調えれば良いだろう。 スープを作る為だけの機械を持っているなんて少し贅沢かもしれない。野菜嫌いの夫に少しでも野菜を食べてもらいたくて、随分前に購入した。その時の自分の気持ちを思い出して、ふっと笑いがこぼれた。
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