recipe2

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夫の態度は見ない振り、何でも無い風を装って用意していたセリフを言う。 「スープね、沢山出来たの。明日、大槻(おおつき)さんの所へ届けてくるわ。」 夫の食べ残したスープを流しで片付けながら、そう声をかけた。 「ん?ああ、あのじいさんか。…そうだな、年寄りならこんなモノが良いかもな。」 年寄りなら?年齢に関係無く美味しいと思うんだけど?失礼な言い草だ。だけど、夫の反応なんてもうどうでもいい。そう思えるようになったのは大槻さんのおかげだ。 大槻さんと知り合ったのは一年程前の夏。うちの家の前で熱中症になりかけた大槻さんを、私が助けたのがきっかけだった。 八十歳近い大槻さんは、寝たきりにならない為にと自分を厳しく律し、朝と夕方、余程の悪天候でない限り、ほぼ毎日ウォーキングしている。病後の痩せすぎた体で、右手に杖をつき、ゆっくりゆっくりした足取りながら、強い意志の感じられる姿勢で歩き続けている。 普段は家の前で会った時に、挨拶をする程度だけれど、男所帯では栄養も偏りがちだろうと思い、時々料理を届けている。
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