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お気に入りの薔薇園でお茶をしながら、私は散々な成果を涙を流して話し。それを聞き飽きたようにアスカ王子はひたすらクッキーを食べている。
あれからコルク王子をお茶に誘っても、食事に誘っても、図書館に誘っても、彼は必ず私に「どうして僕なんかをお誘いくださるのですか?」と聞いてくる。
そんなことを聞かれて、素直に「好きだから」なんて言えるわけがない私は、舞踏会の時と同じような返事しか返せなかった。
「もう嫌!!どうして私はいつもあんな事しか言えないの!!」
本当は好きなのに、出てくる言葉は棘のあるものばかり。
どれだけ見た目が美しくても、これではコルク王子どころか、誰も私を好きになんてなってくれない。
「赤薔薇の女王……このあだ名考えた人はセンスあるわね」
棘だらけで誰も触れない。
ずっと一人で君臨する女王様。
まさに私にぴったりだ。
……でも。
コルク王子だけは、このあだ名をーー。
「俺は素敵だと思うけどなぁ……。赤薔薇の女王様」
「え?」
俯いていた顔を上げると、アスカ王子の薄緑の瞳がジッと私を見つめていた。
熱くて、凄く真剣な眼差しに、言葉が詰まって。思わず息を飲み込む。
「……俺なら、棘があっても女王様でも愛してあげられるのに」
「えっと……ア、スカ……様?」
いつものアスカ王子なら、意地悪な笑みを浮かべながらツンデレとかなんとか言って私をからかってくるのに……。
私の手をソッと握ってきた王子の手は、まるで熱でもあるみたいに熱くて、でもその表情はどこか辛そうに見えた。
「すまない。本当はこんなこと言うつもりじゃなかったんだ」
「……それって」
目を逸らしたアスカ王子はそれ以上何も言わず。私の手に小さな紙を握らせた。
「今度は、俺に君を選ばせてくれ」
最後にそれだけ言うと、アスカ王子は颯爽と薔薇園から去ってしまった。
手のひらに残った小さな紙切れ。そこには次の舞踏会の時間が書かれていた。
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