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「ねぇ見て!綺麗な赤い薔薇」
「あらホント。さっきまで飾ってなかったのに」
「誰が飾ったのかしら?」
ーー赤い薔薇?
女性達の声の方へ目を向けると、クロステーブルの真ん中には三本の赤い薔薇が花瓶に生けられていた。
そこだけではない。
全てのテーブルに、三本の赤い薔薇が生けられている。
「……まさか」
もしかすると、ただの勘違いかもしれない。
でも、それでもやっぱり私はーー。
「ごめんなさい。私……アスカ様のお気持ちは受け取れません」
「どうして?」
「っ……コルク様が、好きだから」
いつのまにか握りしめていたドレスの裾に、皺が寄っていく。
今までも誰かに酷い事を言ってしまった日は、罪悪感で落ち込んだけど。今日が一番苦しくて辛くて仕方ない。
私よりも、アスカ王子の方が傷ついているっていうのに……。
「……あはは!やっぱりそうだよね!」
「アスカ……様?」
スクッと立ち上がって、なんでもないように笑うアスカ王子の笑顔に、少しだけ気持ちが落ち着く。
きっと、私の為に笑ってくれたんだ。
私がいつも落ち込んでいるのを知っているから。気にしないでもらうために。
「ほら。早く行ってあげなよ。アイツも腹をくくったみたいだからさ」
「でも!」
「もう、失敗しちゃ駄目だよ」
そう言って微笑むアスカ王子に、ポンッと背中を押された。
いつも私の話を聞いてくれて、勇気づけてくれて、こんなに良い人はきっとそうそういないだろう。
だから、出来ることならこれからもーー。
「友人として、これからも私の側にいてくれますか?」
「勿論だよ。ほら!早く行った行った!」
「はい!!有難うございました!!」
ドレスを持ち上げて、私は走った。
アスカ王子は、とってもかっこよくて優しくて完璧な人。きっと彼なら、本当に私を幸せにしてくれたんだと思う。
そんな人の気持ちを断って、しかも背中を押してもらった。
だから今度こそ、私は絶対にコルク王子にこの気持ちを伝えてみせる。
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