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だけど私は、あの人をもっと会社の中で、高い地位につけるべきだと考えていた。 いくらなんでも、あれだけの天才を、花形部署とは言え、ただのCM企画部の末端社員で終わらせるなんて、私にはそんなことは 出来なかった。 あの人の実力からすれば、この会社を背負って立つ幹部か、もしくはトップに立てるだけの実力だ。 確かに私の相棒として、うちの部の部下でいてくれれば、確実に私の業績は上がる。 だがそんなことで、彼の人生が小さく終わってしまうというのは、罪悪であると感じた。 私はそのことに悩み続け、いよいよ結論を出した。 彼をCM企画部から外し、もっと大きな部署のそれなりのポストにつけるよう幹部社員に駆けあったのだ。 もしくは、うちの部の部長、つまり会社の幹部社員の一人に彼を抜擢するようお願いした。 基本的には、うちの会社には明確な学閥があり、その学閥出身者じゃなければ幹部になることは出来なかった。 そう言う私とて、その学閥出身者であるが故にCM企画部のチーフに若くして抜擢されたに過ぎないのだ。 だがあの人は高卒であり、しかもバイト入社だ。 そんな人間を会社の幹部にするというのは相当にハードルの高い話だった。 だから最初は却下され続けたが、しかし私が何度も、これまで私が成功させた数々のCMプロモーション企画の真の功労者があの人であることを懇々と訴え続けた結果、その話が会社幹部に受け入れられ、なんとついに、あの人を出世させる事に成功したのだ。 あの人は、見事幹部社員に昇格してくれたのだ。 あの人はついに、ウチの部署の末端社員から、そのトップの部長に昇格したのだった。 だが、 それから1ヶ月後、 あの人は急に会社を辞めてしまった。 異例の大出世を遂げたのに、何故辞めてしまったのか、その理由は全くわからなかった。 そこからあの人とは、完全に音信不通となってしまった。 あの人は、幹部社員になったことで現場から離れ、部署を統括する立場となり、私とも話す機会があまりなくなっていたので、会社を辞めた理由など、私は全く聞けずじまいだった。 あの人には部長用の応接間が用意され、他の部下たちと会う機会もほとんどなくなっていたので、誰にも、あの人が会社を辞めた理由がわからなかった。 周りにいた幹部社員たちも、そもそもあのような異例の大出世を遂げたわけだし、会社を辞めるような兆候など全く見受けられなかったと言っていた。 だがある日、あの人は、ふらっと会社に現れてから、いきなり社長に辞表を出して、そのままプッツリと行方知らずになってしまったのだ。 CM企画部が、それからかってのような華々しい功績を残すことは無くなった。 それは極端に、あの人がいなくなったからだという事は、現場の人間や私にはすぐわかったが、もはやあの人は音信不通となってしまっているので、どうすることも出来なかった。 私は会社側から、かってのような華々しい成果が出せない事を指摘された。 私は途端に、身動きが出来なくなってしまった。
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