4

1/1
前へ
/5ページ
次へ

4

私は今、独立して自分の会社を立ち上げ仕事をしている。 あれからCM企画部はかってのような業績を上げることが出来なくなり、私は自ら進んでその責任を取り、会社を辞めた。 ただ仕事が嫌になったわけではない。 だから自分で会社を立ち上げ、独立して仕事をすることにした。 確かに大手にいた頃のようにはスムーズに行かないことだらけだが、それでも私なりに小さな仕事を色々とこなしていた。 そう芳しい成果が出ていたわけではないけれど…。 だからまあ、強がってみても、当然行き詰まりは感じていた。 会社には私以外にバイトの人間が2人いるだけ。 その規模でやれる仕事をやるしかなかったが、それでもはっきり言って現実は困難ばかりだ。 ある夜私は、徹夜覚悟で一つの小さなイベント仕事の最終仕上げを行っていた。 3日後に開催されるイベントの総合プロデュースを請け負っていたのだが、まだまだ難航している部分が多く、徹夜仕事になってしまった。 深夜。 ちょっとした息抜きに、仕事場兼自宅の窓から、都会の夜の風景を眺めた。 静かな夜だった。 あまりに静かすぎて少し寂しく感じたが、まだまだ仕事の難問が残っていたので、そちらに意識を集中した。 その時不意に、夜空の遠くの方が何故か気になった。 よく見ると、遠く空に、何かが浮遊しているのが見えた。 だがそれは、不思議なことに、徐々にこちらに近づいてきたのだ。 あれは、 一体何だ? そう思いながら、呆気に取られていると、それは私の目の前まで、いきなりやって来た。 それは、 不思議な傘の大群だった。 相当の数の傘の群れという群れが、どういうわけか、深夜の夜空に浮遊し、私の目の前に出現したのだ。 正直、何が何だか、さっぱり訳がわからなかった。 だが、しばらくして傘の大群から、一人の人間が降ろされ、私の部屋の窓辺に着地したのだ。 呆然としている私をよそに、そのうち傘の大群は、いきなり真っ暗な夜空高くに舞い上がり、飛翔し始めた。 一体、何が起きているのか、全く判然としない中、いつの間にか大量の傘の群れは、暗黒の夜空の向こうに飛び去り、 私の目の前には、 傘の群れから降りた、 "あの人"が立っていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加