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私は今、独立して自分の会社を立ち上げ仕事をしている。
あれからCM企画部はかってのような業績を上げることが出来なくなり、私は自ら進んでその責任を取り、会社を辞めた。
ただ仕事が嫌になったわけではない。
だから自分で会社を立ち上げ、独立して仕事をすることにした。
確かに大手にいた頃のようにはスムーズに行かないことだらけだが、それでも私なりに小さな仕事を色々とこなしていた。
そう芳しい成果が出ていたわけではないけれど…。
だからまあ、強がってみても、当然行き詰まりは感じていた。
会社には私以外にバイトの人間が2人いるだけ。
その規模でやれる仕事をやるしかなかったが、それでもはっきり言って現実は困難ばかりだ。
ある夜私は、徹夜覚悟で一つの小さなイベント仕事の最終仕上げを行っていた。
3日後に開催されるイベントの総合プロデュースを請け負っていたのだが、まだまだ難航している部分が多く、徹夜仕事になってしまった。
深夜。
ちょっとした息抜きに、仕事場兼自宅の窓から、都会の夜の風景を眺めた。
静かな夜だった。
あまりに静かすぎて少し寂しく感じたが、まだまだ仕事の難問が残っていたので、そちらに意識を集中した。
その時不意に、夜空の遠くの方が何故か気になった。
よく見ると、遠く空に、何かが浮遊しているのが見えた。
だがそれは、不思議なことに、徐々にこちらに近づいてきたのだ。
あれは、
一体何だ?
そう思いながら、呆気に取られていると、それは私の目の前まで、いきなりやって来た。
それは、
不思議な傘の大群だった。
相当の数の傘の群れという群れが、どういうわけか、深夜の夜空に浮遊し、私の目の前に出現したのだ。
正直、何が何だか、さっぱり訳がわからなかった。
だが、しばらくして傘の大群から、一人の人間が降ろされ、私の部屋の窓辺に着地したのだ。
呆然としている私をよそに、そのうち傘の大群は、いきなり真っ暗な夜空高くに舞い上がり、飛翔し始めた。
一体、何が起きているのか、全く判然としない中、いつの間にか大量の傘の群れは、暗黒の夜空の向こうに飛び去り、
私の目の前には、
傘の群れから降りた、
"あの人"が立っていた。
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