真夜中のキャッチボール

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 次の日。母さんが昼前に起きてきた俺に駆け寄ってきた。 「灯夜! 昨日はどこ行ってたの!? 部屋に行ったら、いなくて心配したんだから!」 「ごめん、昨日も星合橋に涼みに行ってたんだ」  そう言うと、母さんは怪訝そうに俺を見てきた。もしかしたら、気づいているのかもしれない。俺は、僅かに顔を引きつらせた。 「そう……今度からはちゃんと外に出るときは何か言ってね。本当に心配したんだから……」 「わ、分かったよ」  バレていなかったらしい。俺は、ふっと肩の力を抜く。  母さんは、ちょっと過保護なところがある。これには、ある理由があった。俺が幼稚園に入りたての頃の話だ。俺は、誘拐事件の巻き込まれたことがあった。母さんが幼稚園にいつもの時間に迎えにきて、先生と話し込んでいる間に、俺がその場から消えてしまったらしい。母さんと先生は探し回って、警察にも連絡をしたみたいだったが、程なくして俺は見つかったという。知らない男に抱きかかえながら、幼稚園に入ってきたらしい。最初は誘拐した犯人かと思っていたが、その男の話によると、幼稚園の近くにある公園の草むらの中で眠っていたのだそうだ。だから、誘拐事件というのは冗談だが、そのこともあってか、母さんは何かと俺の行動が気になってしまいがちなんだと思う。どこへ行くの? 何しに行くの? ちゃんとこの時間までには帰ってくるのよ。そう何度もしつこく訊いてくるのだ。 「じゃあ、お母さん仕事戻るから。出かけるときはちゃんと言ってね」 「ああ」  リビングのソファに寝そべる。冷房のひんやりとした風が頬を撫でた。このダラダラとした時間が本当に好きだ。今日は部活もない。なにをするでもなく、適当にスマホを見る。すると、LINEのアイコンのところに「1」と表示が出ていることに気づく。LINEが来ている。誰からだろうとアイコンをタップしてみると、ひかるからだった。俺は、上半身を起こし、すぐに内容を確認した。
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