rain

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 誰もいない……司祭さまでさえ。  片隅の懺悔室に目を向ける。中にいるのかな……。  全てを話さそうと思い、私はその小さな箱の中へと足を入れた。 「司祭さま……」 「マリアだね。おかえり」  匿名で罪を告解する懺悔室……。小さな小窓はあるが、その先は互いに見えないようになっている。しかし司祭は私だということにすぐ気付き、そして言葉にする。声でわかるのかもしれないが、それならここで話す意味はあるのだろうか。 「司祭さま、私……」 「言わなくていいよ……辛いだけだからね」  その言葉に涙が溢れそうになる。『今まで辛かっただろう』『君だけが悪いわけじゃない』『全ての生き物は幸せになるべき』等という言葉を頂いたが、私の耳にはあまり入ってこなかった。  『罪を忘れてはならない』……その言葉だけが心に残っている。これは私への罰なのだろうか。 「ひとつ……聞いていただけませんか? 懺悔ではないのですが……」 「何でしょう??」 「視線が……ずっと視線を感じるんです」  前のめりになりながら小さく声に出した。 「気付いたんです。うっすらとした気配ですが、友人の夫と関係をもった時よりもずっと以前から感じていたみたいで……そして父が亡くなった今も」  徐々に声が大きくなると同時にビブラートをかけたように震えていた。 「この視線……司祭さま……あなたですか?」  息をのむとはこういうことなのか、私は息を止めて目の前の壁を見つめていた。 「そうだね。そうだと言えばそうなるだろうし、違うといえば違うのかもしれない」 「……どういうことですか??」
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