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「マリア……君を責めるつもりはないが、何故見えもしない場所や人物に『司祭さま』が『そこにいる』と断定しているんだろうね」
体がこわばった。急に頭の中が真っ白になり、今までの出来事が黒く上塗りされていくようだ。
「司祭でなければ……あなたは、誰ですか?」
「そんなことより君は義父について疑問は抱かないのかい?? 急死してしまうなんて」
質問で返答されて言葉が出ない私は、ただただ目の前にいるであろう人の声を聞いた。
「マリアが好きで好きで堪らなくて、君に近付く人物を殺していたのか……それともマリアが憎くて堪らなくて、君の大切なモノを奪っていったのか……」
「――お、お父さまは殺されたって言うんですか!?」
「さぁ……ただ不可解な死だなぁ……って。義父か、実母か司祭か……はたまた……」
「何を言ってるか……わかりません!!」
言葉を言いきるより先に懺悔室から飛び出ると、静まり返った教会に足音を響かせて屋外へと駆け出す。
雨脚が強くなっていた。身体中に打ち付ける雨が痛い。しかし何も考えずがむしゃらに走っていた私は、ぬかるみに足を取られて顔面から転倒した。
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