キッツ↗との出会い

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キッツ↗との出会い

その日、僕は1人でとある森に来ていた。 目的は、野鳥の写真撮影。 買ったばかりの一眼レフカメラを片手にうろうろ。 綺麗な野鳥に夢中になり、足元の折れた木につまづいてしまい、転倒。 ドボンッ 「えーーー!!」 大事な大事なカメラが池に落っこちてしまった。 ブクブク 小さな気泡みたいなのが池の水面を覆う。 次の瞬間、その池の上に何かが浮いていた。 「犬」 「犬ちゃうわ」 「しゃ、しゃべった」 「当たり前やろ、言葉喋れるのが人間だけやと思うなや」 やれやれといったかんじで、その謎な生き物はポケット?らしき所から、一眼レフカメラを取り出した。 「あー、それ僕のカメラ」 聞こえているのか、聞こえていないのか、その生き物はポケット?からさらにもう1つカメラを取り出した。 (もしかして、これはあの有名な昔話的な…) 「おほんっ、では改めて、おまはんが落としたのはこっちのカメラか、そっちのカメラか、どっちや?」 (なんだか、喋り方おかしな生き物だな) 「きいとりまっか」 「あっ、はい、聞いてます」 返事はしたものの困ったな。 それというのも、2つのカメラの違いが分かりません(T_T) 「おいおい、まさか、おまはん自分の持ち物もわからへんお馬鹿はんどすえ」(^^)/ 表情といい喋り方といい、なんかイラッとする生き物だな。 まあ、いいや、悩んだってしょうがない。 「じゃあ、こっちで」 僕は適当に指さした。 「あっ、そう、ほな、こっち返したるわ」 謎な生き物はカメラを僕めがけて放った。 なんとか、カメラを無事にキャッチ。 「どっちでも同じやがな」 (同じなんかーい!!!) 悩んで損したな。 「どうも、ありがとうございました」 お礼を言ってその場を去ろうとすると、肩に肉球を置かれた。 「ちょい待ちや、世の中タダちゅうもんはほぼないねん」 「でも、僕、あまりお金持ってませんけど」 財布をのぞきながら答える。 「ちゃうちゃう」 (犬か) 「おまんらの世界の金なんて、わてらの世界では何の意味もないやんけ」 「じゃあ、どうすれば」 「まずは、仲間をここに連れてこいや。そやな、期限は1週間、女の子がええなー、もしこなかったらえらいめにあうでー」 謎な生き物はゆうれいみたいなポーズで池の中に沈みかけたが、また、戻ってきた。 「そやそや、名前きいとらんかった、わては、キッツ↗いいますねん、以後お見知りおきを」 「キッツ↘」 「ちゃうちゃう、キッツ↗や、気に入ってるんやから間違えんなや」 すごい近距離でにらまれた。 「僕は廣瀬猛」 「ひろぴょんやな、分かったわ、じゃあ、また、1週間後にな」 そう言うとキッツ↗は姿を消した。 (そっか狐にばかされたんだな) 僕はポンと手を叩いた。 もう、会うこともないだろうし、一眠りしたら忘れてるだろう。 何はともあれ、カメラが戻ってきて良かったー。( ´∀`) それから1週間、何事もなく日々は過ぎた。 しかし、その日の夜から、毎日、夢の中にキッツ↗が出てきては、【まだか~】と言われ続けた。 日に日に追い込まれていき、このままでは、いけないと思い、ついに、仲間を探す決心をした。
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