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11 雪の降らない街
「寒いね」
話したい大切な言葉を抱えて、君と歩く帰り道。
雪が降りそうな寒さの中で、雪の降らない街を歩く。
悴む手は行き場もなく、ポケットの中で縮こまる。
「バイバイ」
いつかこの街で雪が降ったら、言おうと思っていたこと。
聞かないままで君は、雪の降らない街を出ていく。
言えない言葉は行き場もなく、心の中で蹲る。
『好きだよ』
君と出会ったあの日から、ずっと思っていたこと。
雪の降らない街の中で、頬に一粒雨が降る。
積もった想いは行き場もなく、僕の中でただ溶けていく。
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