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彼女たちは人形
「以前、女性器を切除だか、子宮を摘出だかの手術を受けた”闇医者”とは先生ですか?」
私は訊きました。
女性医師は「どうでしょう。私なの? そういう手術も頼まれればしたけど」と言いました。
私は取材で知り合い、子宮からの匂いがするというノイローゼだった女性の死について話をしました。
医「それは私じゃないね。そういうことを言っている子には会ってない」
光「では、どういう依頼で、そのような手術をしたことがあるのでしょうか」
医「割れ目がある少女人形を知ってる?」
女性医師は私に写真を見せました。
以前、フェティッシュバーで(”処女の血”を飲んだ店ではなく)澁澤龍彦ファンに見せて貰った人形でした。
たしか、澁澤龍彦の少女の話か何かの本の表紙になっていたような気がします。※1(私は澁澤龍彦は特別に好きでも苦手でもないジャンルです。)
「このお人形さんになりたいって、だから、割れ目を縫ってほしいって言われて」
女性医師は言いました。
「縫ったんですか?」
私は訊きます。
「似せた、けど、同じはならないね。人形とはね」
女性医師は言います。
そして、このとき、はっと気づいたのです。
女性医師に同行した女性たちは、人形のふりをしているのです。
私のような凡人からすると、彼女たちの感性は分かりません。というより、わかることがきっと、できないのだと思います。
ですが、彼女たちが頼んだ飲み物に口をつけていないことに気が付きました。
そして、ちょこん、と座ったまま、身じろぎもしないのです。
私から見ると痛々しげな傷に見える【球体関節人形の手術】も、おそらく、年齢が50代以上の人も混ざっているであろう女性たちがロリータファッションに身を包んでいるのも、何か事情とポリシーがあるのだろうと思います。
私も、彼女たちを人形として扱うことにしました。
注)※・1澁澤龍彦著「少女コレクション序説」でした。
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