彼女たちは人形

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なぜ、人形になりたがるのでしょうか。 私は女性医師に訊きます。 医「まず、人間よりも美しい。人間よりも浅ましくない。人間のような努力はしない。人間からの崇拝対象であったり、愛玩対象である。要するに、一方的に、何も努力をせず、崇拝されたり、愛玩されてもてあそばれる運命。自分からのアプローチはない、と言いたいのよ」 3bcd0f41-4f15-4c31-a97d-5b07eabccece 手厳しい意見が飛び出したので、私は少し驚きました。 お人形さんたちは動きません。 医「自分からのアプローチをしたとなると、責任が生じるじゃない?でも、相手側からのアプローチを一方的に受けたとなると、責任は生じない」 光「はい」 医「もういかなる責任も負いきれない。人間としての役割は果たしたくない。そういう人形が多いんじゃないかしら」 私はちょっと厳しいことを言ってみます。 光「では、骨とう品とか、中古品のお人形さんということですね?私などの素人感覚からすると、お人形というのは新品でけがれなき乙女、という印象なのですが」 医「そうよ。汚れてるの。汚れたお人形なの」 すんなりと認められてしまったので、私は肩透かしにあった気持ちになります。 私の言葉に怒りだすと思ったのです。 そして、すぐさま、あぁ重い話が来るなと予感しました。 医「いろんな性被害に遭った日から、時間が止まってしまった人形なの。歳をとることもできず、時間を戻すこともできず、どこにも行けなくなったので、人形になることにしたんだよ」 女性医師が人形たちに代って話します。 このように、代理でしゃべってもらい、自分たちの言葉を言語化してもらい、自分たちを理解してくれる人がいたら、それは頼りたくなるのも理解できます。 自分たちを理解してくれていない人には、心にも体にも立ち入られたくないのでしょう。d47db3d1-3b9f-4ab0-a658-429be989518d 私はここで、この共依存のような状態が理解できました。 そして、女性医師は語りました。 「私の親が産婦人科で、年中愚痴を言ってたわ。人間は薄汚いって。うちの親は治安の悪い場所で開業したから、堕胎手術ばかりだったのね。全部の堕胎を否定してない。強姦の堕胎もあるし、時期を間違えた堕胎もある。でも、いたずら半分の軽いノリの堕胎が多かったらしいのね。いつも、人間の悪口、女性の性についての不快感、侮蔑感を示してた」 光「先生も産婦人科医だったのですか?」 医「それは言わないの」
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