【あとがき】

1/1
前へ
/294ページ
次へ

【あとがき】

2020年、新型肺炎が世界を席巻し、日本も暮らしが激変しました。 僕も仕事を失いました。 有り余る時間を手に入れて、二ヶ月ほどで一気に書き上げたのが本作です。 ろくすっぽ構想もしないで、たった二ヶ月でよく書けたな、と、あの頃の精神状態がいまとは違っていたのだと、振り返ってそう思います。 本来、僕がストーリーに求めるのは「センス・オブ・ワンダー」であり、人生に悩む哲学とか、人間の生き様とか、そんなことはどうでもよく、世の中にあふれるそうしたストーリーにはちっとも心が動かず、だからエブリスタで発表する小説も、どちらかというとSFやそれに近い傾向にありました。 ところが本作は、9万文字に及ぼうとする長編にもかかわらず、そうしたオカルトな設定は一切登場しません。そのことからも当時の精神状態が「通常」ではなかったのだと思えます。 一応、恋愛カテゴリーにはしていますが、登場人物は誰も恋をしていません。どうもぼくは恋患いにかかるキャラを書きたくないので、そこまで振り切ってないのは、僕自身の性質によるのでしょう。永盛のアリサの関係が、これからどうなっていくのかは書いていませんが、きっと順調にいくのではないかと思ってあのシーンで完結しています。 恋愛カテゴリーにしたせいか、閲覧数も他の小説に比べてよく伸びてくれて、そうすると少し欲が出てきました。 10万文字以上でないとエントリーできない公式コンテストに挑戦してみようと、1万文字加筆したのです。 登場シーンの少なかった永盛の母親や天亜蘭がなぜキャリア志向に走ったのかのエピソードをなんとかでっちあげ、10万文字を超えたので、【あとがき】も追加しました。 一度書き上げてから2年が経過し、僕自身の仕事も再開できた今、冷静に読み返してのエピソード加筆はやや苦労しましたが、なんとか形になりました。 しかしまたこんな話が書けるかと言われると、首をかしげてしまいます。ましてや恋愛を全面に押し出した小説など、ぜったいに無理だな、と本作を書いて改めて思います。 ということで、次の長編ではまた「センス・オブ・ワンダー」の闇のなかへと入っていきますので、そちらでお会いいたしましょう。
/294ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加