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第1章 課長は上から目線
「わたしと結婚しなさい」
課長の言ったことが理解できなかった。
「あのう……」
なにかの聞き間違いだろうと思って、蟹山永盛は口ごもった。会社のオフィスで真っ昼間に話す内容ではないだろう。
呼ばれて来てみたものの、京極課長のデスクの前で固まったまま、へんな汗が出てきた。またなにか課長を怒らせてしまったのだろうかと不安になっていたからかもしれない。
「蟹山くんは独身でしょ?」
と、京極課長は言った。確認、というより、念を押しているような口調。もっとも、課長はいつもなんでもお見通しで、逃げ場のない言い方をする。
「はい……」
「見るからに独身って感じだものね。これまで彼女とかいたことないでしょ?」
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