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翌朝、私は朝食を運んできてくれた女性の看護師に、早速気になっていたことを訪ねた。 「あの…救急車を呼んでくれた人のこと、何かわかりませんか?どうしても、一言お礼を言いたくて…」 私たち三人の、命を助けてくれた恩人だ。 せめてお礼と、無事に出産できたことを、報告したい。 最後の器をテーブルに並べた彼女は、済まなそうな表情で首を横に振った。 「それが…その人、救急車が到着した時にはもういなかったらしくて、詳しいことはわからないんです」 「…そうですか」 「でも、確か…」 続いた言葉に、私は電気が走ったような衝撃を受けた。 「救急隊の人が言ってたんですけど、救急車を呼んだ人…あなたのお兄さんだって言ってたみたい。でも…紡輪さんって、ひとりっ子なんですよね?」 「…え…?」 「聞き間違いですかね?…なんか、変な話ですよね」 変な話。 不思議な話。 彼女はそんな軽い言葉で片付けたが、私には、とても重要な事実だった。 『そうか。…賑やかになるな』 『…一緒に生きてきたつもりでいるんだ』 『円…。元気でね』 全ての点が今、線になって繋がったような気がした。 そうか…。 そういうことだったんだ。 私は…何も気づいていなかった。 気づけなかった。 いや、それ以前に、私は何も… 何も、知らな過ぎたのだ。 彼に、会わなければならない。 会って、確かめたいことがある。 私は、あの携帯電話を手に取り、あの世界に通じる番号に…彼に繋がる番号に、電話を掛けた。 呼び出し音が、三回鳴り…そして、意識が途切れた。
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