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ー君の背中と旅立ちー
必死に 追いかけている。
その背中を。
ずっと前を歩いている君を。
後ろを振り返らず、前を見つめる君を。
きらきらと輝く君を。
ずっと 追いかけていたいんだ。
もう少しすると 君は 見えなくなる。
ずっと 追いかけていたその背中。
君は、はばたいていく。
まだ私の見たことのない世界へ。
光の粉をのこして、旅立ってゆく。
なんて ただの空想だ。
現実は。
君は 墜ちていった。
その背中を最後まで私は見ていた。
君が空に体をなげるその瞬間も。
その少し前、振り返ってワラッたその顔も。
ずっと背中を見ていたから顔を見ていなかったことに今更気付く。
君が、視界から消えたその時。
私の足はとまった。
君の机の上に置いてある一枚の便箋。
君は私の見たことのない世界へ旅立った。
真っ紅な液体と 冷たい個体をのこして。
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