34 ジーン

1/1

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ

34 ジーン

 爆発が起こり、扉と、すぐ目の前にいた人間を吹き飛ばした。  煙が立ち込める中、ようやく疑問が生まれる。 ――俺は今、何をした?  魔力をためていた。無意識だろう。感情が高ぶると魔力の制御が利かなくなる、というのはよく言われていることだった。  そして、その魔力をぶつけた。  誰に――?  いや、まて。冗談だろう。だって、知っているはずだ。俺の魔法がどうしようもない偽物だと。騙せていなければ発動もしない。爆発なんて起こるはずもない。  ……違う。おかしいのはそこじゃない。どうして俺は魔力を練ることができた?  俺は魔力なんて持っていない。魔法を使えると相手に思い込ませた時だけ、その現象を引き起こすことができる。相手の認識あっての魔法なんだ。だから、おかしい。魔力を練って、こんな魔法を使えるなんて、  ――ありえない。  わかっている。頭の中では、たった一つ残っている可能性がある。でも、それを信じるにはあまりにも、あまりにも、俺にとって都合がよすぎる。俺にとって、優しすぎる。  そんな可能性を、俺が、信じられる訳ないだろう……! 「……あ、はは」  硝煙の中から声が聞こえ、ハッとする。 「っ!」  爆発の中心へと駆け寄り、そこに横たわる人影を抱え起こす。 「あちゃあ……、死んでなかったかぁ」  すすだらけの顔で力なく笑うのは、まぎれもなくアイーダだった。 「……なんで……! どうして……!」  いったい、何に対して言ったのか。自分でもよくわかっていなかった。  それでも、彼女が言った言葉は、俺の疑問や迷い、その全てに、一つの答えをくれた。 「信じてたから」  その言葉を聞いて、ようやく気付いた。  自分が、泣いていることに。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加