最初で最後。武士に二言あり。

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 ***  山南は、道場で一人稽古をしていた。  せめて、何かあった時に足手まといにはならないように。右手だけで剣が自在に扱えたら。  そんなことを思って、誰もいない時間を狙って稽古をしていた。だが、思うようにはいかない。  片手だと、上手く力が入らない。何か、根本的にやり方を変えなければ。  山南は、ふと、ある言葉を思い出した。それは江戸にいた頃、道場で言われたことだった。 「山南さん。北辰一刀流出身のあなたにこれを言うのは言いづらいですが、はっきり言わせてもらいます。天然理心流では、勝てばなんでもいいんです。最悪、足蹴りだって体当たりだって構わない。だから、理心流には柔術の稽古も目録に入っているんですよ」  それは、今や新選組の局長として皆を率い、慕われている近藤の言葉だった。 「そうですよ、山南さん。まあ、歳三みたいにそればっかり、っていうのも考えものですけどね」 「お前はいつも一言余計なんだよ!勝ちゃあいいんだろ、勝ちゃあ!」  共に稽古した近藤の姉・さくらと、天然理心流の先輩・土方歳三のそんなやり取りも思い出して、山南はふっと微笑んだ。さくらは今や島崎朔太郎と名乗り、新選組の副長助勤を立派に努めている。土方は、自分と同じ副長職について、隊の実務を一手に担っている。 「土方君には、水をあけられてしまったなあ」
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