最初で最後。武士に二言あり。

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   *** 「君に会いに来るのは、これで最後にしようと思う」  布団の中で、山南は明里の頬を優しく撫でながら、そう告げた。 「……なんでどす?」  明里は、思わず聞いてしまった。  頭では、山南の申し出は受け入れるべきで、むしろその方がいいということはわかっていた。だが、気持ちは追いつかなかった。 「それは……」 「もう、お会いにならへんおつもりなら、最後に聞かせてくれてもええやないの」  山南は「そうだな」と言って体を起こすと、右手で自分の左腕を握った。 「私はね、腕を怪我して、以前のように剣を振るえなくなってしまったんだ」 「え……」  明里は驚いて、自身も起き上がって山南を見た。 「新選組では一応、剣術以外で役に立てるようにと働いているが、やはり引け目はある。だから、本当はここに通う資格なんかないんだ」 「そんな……」 「君には感謝している。いい夢を、見させてもらった」  明里は、じっと黙って山南を見た。 「そう……どすか。山南はんがそう言わはるんなら、うちには止めることはでけしまへん」  今度は、山南が驚いたような顔を見せた。 「自分から言っておいてなんだが、引き留められるかと思ったよ……ほら、客は多い方が君にとってもいいだろうし」
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